Pipopa Organization

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引用。こころはあなたのもとに

書名:こころはあなたのもとに

著者:村上龍

出版社: 文藝春秋

引用、文章入力:Pipopa

書籍情報出典:Amazon.co.jp

Amazonリンク:心はあなたのもとに (文春文庫)



---単行本版178-180p

送信日時:02/9/3 22:10 件名:Re:いつものバーで

西崎さん、昨夜は時間をとってもらって、そして学校のことを聞いてもらって、本当にうれしかったです。オーパスワンもごちそうさま(^.^;

あれから、いろいろかんがえてしまって、今から書くことは、とても長いメールになってしまいそうです。

西崎さん、忙しいのに、ごめんね。ざっと読んでもらえればと思います。

病気なって、離婚して、わたしは、もう自分の人生はだいたい終わったなと思ったんです。先が見えるっていうか、自分でもびっくりしたのです。夫もそうだけど、わたしの回りには、本当は人生がだいたい終わってしまった人がたくさんいて、あ、この人もそうだ、あの人もそうだって、自分でよく見えるようになりました。

終わった人には特徴があって、それは、出会いがないのです。何かが変わってしまうような、人生観とか、自分への気持ちとか、そういうものが変わってしまうような出会いがない人なのです。わたしは、もうそういう出会いはないんだと決めて、それは苦痛じゃなくて楽だったのです。人と出会うって、案外大変なんだなということもわかりました。

スナックで働き始めた時も、五反田に移った時も、誰かと出会うなんて思ってなかったのです。単に生きるため。人生がだいたい終わっている人でも、生きていかないといけないから。自分にも人生にも、自信をなくしていましたが、それも案外、楽でした。自信があると、何か始めたり、意義のあることをやらなければいけない感じがする。たいていの人間にとっては、自信とか、ないほうが楽なのです。

そして、自信には二種類あると分かったのです。一つは他の人から与えられる自信。生きていてもいいんだよ、という自信。西崎さんは、お母さんのことを話してくれたけど、子どもは、親からもうらうしかないのです。いっしょに遊んだり、いっしょに過ごす時間から、西崎さんだって、生きていてもいいんだよって、そういうことが伝わってきたはず。愛情ってことかも知れないけど

生きていてもいいんだよ。そういう自信は、他人からしかもらえないものです。ソウル、仙台、それに京都、入院していた病室、もっともっと他の多くの場所で、香奈子は、それを西崎さんから頂きました。

二つ目の自信は、生きていけそうだ、という自信。自分自身でつかまえないといけない自信です。だから、わたしが自分でつかまないといけないと思っています。来年4月から学校に行くこと、それまっで「鹿」で頑張ること、それくらいしか、できませんが…。

本当に感謝しています。長いメールになって、申し訳ないです。

心はあなたのもとに

香奈子

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---単行本版p205

 だが、そんな問題じゃないと、わたしは、光の帯が広がる鹿児島湾を眺め、銀座のクラブで酔客の相手をする香奈子を思い浮かべながら、声に出さずにつぶやいた。そんな問題じゃない。問題は、社会性の外壁が崩れていて将来のイメージなんか持つことができない人間がいるということだ。ただひたすら、今という時間を生きるしかない人間がいるということなんだ。